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Movie
Lyrics
Stay the way you are
作詞、作曲:山中拓也
編曲:THE ORAL CIGARETTES
-
不安の数
ハイになって
腐ったピースライト
哀れな背徳感に
奪われた⼈体頭の中
トんでいって
うなだれたLife
何も⾒たくないな
無様にまだ漂ってるんだOK!!
Alright!!
I wanna make some noise!!
OK!!
Alright!!
歓声を抱いてStay the way you are
and the time has come
全てをただ熱望して
Stay the way you are
and you can feel safe here
掴み取れ Grab the star蟻地獄に落ちていった
⾏き場ない未来
さよならを告げて
嘘で固めた浮かんだまま
宙に吐いた
番いの粒⼦は
影に⾝を隠して
終わらない時間を割いた -
Why am I so sad?
I'm a soldierOK!!
Alright!!
I wanna make some noise!!
OK!!
Alright!!
歓声を抱いてStay the way you are
and the time has come
全てをただ熱望して
Stay the way you are
and you can feel safe here
掴み取れ Grab the starEvery time we love
and the time has come.
終わりはない 越えてゆけ
Stay the way you are
and you can feel safe here
掴み取れ Grab the star
Interview
- 新曲“Stay the way you are”、非常に不思議な曲だと感じました。ブリブリしたイントロのベースとズクズクしたギターが押し切っていく平メロは骨太なガレージロックですが、その道中でポストハードコアっぽい展開が挿し込まれたり、上を飛んでいくギターリフはオリエンタルな質感だったりする。そしてサビでは、これぞオーラル節というメロディが飛び出すという、背骨はオーセンティックなロックンロールなのに、その上にはオーラルが培ってきた音楽細胞がこれでもかと山盛りになっている曲だと思いました。ご自身の手応えはいかがですか。
- 山中拓也「8月にリリースした“VOICE”はメッセージを立たせるためのサウンドを志向していたんですけど、今回はサウンドがカッコいい曲にしたいというところから作り始めて。作ったのは今回っているホールツアーの直前くらいだったんですけど、アタマのベースのリフを思いついた時点で曲全体の世界観がバーッと見えたので、作るのがすごく早かったです。ベースのイントロを思いついたら次はギターのフレーズを思いついて、そしたら曲の展開もスムーズにできて。こんなに早かったのは久しぶりでしたね。“ERASE”を作った時のスピード感に似てました」
- それは、拓也くんの得意な感じを存分にやれたということ?
- 山中「いや、新しい挑戦ではあったんですよ。サウンド面で言うと、俺達がインディーズ時代に好んで聴いていたギターロックをもう一度たぐり寄せてみたら面白いんじゃないかっていうところから始まっていて。今のロックシーンがミクスチャーとかラウドの方向に移って行っている中で、もう1回、自分達が好きだと思えるギターロックを作りたかったんですよね。ここ数年で培ってきた知識、ガレージロックやポストハードコアの要素をギターロックに付合させながら作ったら、めちゃくちゃ格好いいものができるんじゃないか。そういう観測から始まった楽曲ではありました」

- 今格好いいと思えるギターロックを作りたかったのは、なぜですか。
- 山中「自分が好きやったバンド、好きやった音楽を振り返るタームがあったんですよね。それもきっと、“LIMIT”や“VOICE”のインタヴューで話した悩みを抱えていたからこそ自分の好きな音楽に立ち返ったんやと思うし、いろんな音楽を聴き漁ってたんやと思うんですけど。自分がお客さんだった頃、どんなバンドを聴いて心を躍らせていたのか。そういうバンドを有名・無名にかかわらずバーッとさらっていったんですよ。そしたら今でも心躍らされるものがあって、なおかつ『このジャンルめちゃくちゃ格好いいのに、最近衰退してるなぁ』とも思ってしまって。じゃあ自分の持っているものを全部混ぜて俺なりのギターロックを作ってしまえばいいんじゃないかなという結論に至りました」
- 擦り合わせておきたいんですが、拓也くんの言うギターロックとは、どういった世代の音楽を指しているんですか。
- 山中「あの頃は、残響レコードが輩出したバンドがシーンの空気を変えたタイミングやったと思うんですよ。テクニカルな部分と衝動の部分とがバランスよくて、つまりバンドに必要なもの両方が絶妙に噛み合っている音楽だったんですよね。今はどちらかと言うと衝動のほうが価値を帯びている時代になったと思うんですけど、それ以前のバンド達は、衝動を損なうことなくテクニックにも力を入れていた気がするんです。サウンド、音符の繋ぎに注目してみても、アメリカンなロックを参照するのではなく、日本だからこそできるアジア的な音楽であることにこだわっていた気がして。海外では鳴らせない日本ならではギターロックを象徴していたのが残響レコードのバンド達やったんやなって、そういう実感がありました。なので、それを今一度リバイバルさせるようなギターロックを作ってみたら面白いんじゃないかなと思ってましたね。アンダーグラウンドとオーヴァーグラウンドの橋渡しをしたいっていう気持ちは以前から話してきましたけど、現状、俺の思うギターロックでめちゃくちゃ売れているバンドが見当たらないなと思って。ということは、極端な発想かもしれへんけど、ギターロックのカルチャーも本来はアンダーグラウンドなものだったのかもしれないなっていう感覚が生まれてきて。たとえば“嫌い”をやっていた頃とか、俺らがインディーズでやっていたギターロックも現状で言えばアンダーグラウンドな音楽性なのかなって思ったんですよね。当時はあるディレクターに『変拍子をやっても売れない。ギターもメジャーでドカンとやったほうがスケールの大きいバンドに見える』と言われて音楽性が徐々に変化していきましたけど、オーラルとしてのスケール感を大事にしている今だからこそ、自分達が好きでやっていたギターロックの感じを大事にしてアップデートしてみたかった。その結果として、自分の芯の部分に還れたんじゃないかなと思いますし、俺には無意識で発動するキャッチー変換装置が絶対にあるから、どれだけインディー感を重視しても上手くまとまるだろうと思ってました。逆に言えば、俺が悩んでいた『どうしてもキャッチーな曲になってしまう』という部分を自分ならでは強みと思えるようになった曲なのかもしれないですね」
- 日本的なオルタナティヴロック、日本的なエモのシーンをルーツにして通ってきたという話だと思うんですが、あの面白くて素敵なシーンが何を背景にして生まれたものだったのか、分析したこともあったんですか。
- 山中「当時、自分もプレイヤーとしてじゃなくてお客さんとして思っていたことですけど、『この音楽を聴いてるヤツは格好いい』みたいな感覚がどこかにあったはずなんですよ(笑)。普通のロック、普通のポップじゃなくて、『テクニカルなのにどこまでも衝動的な音楽を聴いている自分が格好いい』っていう。それによって一種のコアな文化ができていったわけですけど、濃くてコアな文化であるがゆえに、大衆に広がる機能が消えていった気がするんですよね。閉じていったというか。『音楽詳しくてコアな曲ばっかり聴いてるアイツね』ってクラスで煙たがられる人間が数多く生まれてしまった」
- はははははは。
- 山中「一目置かれるんじゃなくて、『コアな曲ばっかり聴いてるから話が合わないよね』って言われる感じ。でも、そういう音楽を聴いている身からすると、本気でカッコいい音楽やと思っているわけですよ。それだけ当時の日本のギターロックは新しいロックの形やったと思うし、『これを聴いている自分が格好いい』と思う感覚と『新しい音楽に興奮している』っていうのは紙一重やなって思うんですよ。新しい音楽を掘ったり、今までに聴いたことがない音楽にエキサイトしたりするのは、音楽を聴く醍醐味のひとつなので。でも俺はそういう文化を再発させたいわけではなくて、本当に俺が格好いいと思う音楽を混ぜ込みたい一心でこの曲を作ったんですよ。自分がお客さんとして音楽に興奮していた頃の衝動を込められれば、一番納得できる形で自分を肯定できるんじゃないかなと思ってました。で、実際に“Stay the way you are”を作ってみて、これからのTHE ORAL CIGARETTESの正解を見出せた気持ちになったんですよ。音楽的な部分だけに振り切れず、どうしてもバランスを取ってしまうことが悩みやったけど、この曲を作ったことで、そのバランス感覚が武器になると思えた。そういう意味で大きな1曲です」
- おっしゃる通り、ガレージとオルタナとポストハードコアを山盛りにしながらもオーラル然としたメロディが突き抜ける1曲だと思います。“Stay the way you are”というタイトル、サビで歌われていることも含めて、自分を自分たらしめるものを堂々と謳うことがメッセージになっていると感じたんですが、歌の中身に関しては、どんな気持ちが表れてきたと思われていますか。

- 山中「これはもう、自分の曲に誘導された感じの歌詞やと思います。サウンドから作ってデモを投げたタイミングでは、歌で何を伝えたいかが明確になっていなかったんですよ。とにかく俺の思う格好いいギターロックを鳴らすことが第一だったので。そこから楽曲を作っていく中で、まずサビから歌詞とメロディを考えようとなった時に、一気に開けた感覚になるフレーズをぶつけたいなと思ったんです。そしたら、どんなメロディフレーズを考えたとしても<Stay>っていう言葉が入ってきてしまったんですよ」
- なんとなくのホニャララ語で歌ったものが、ことごとく<Stay>を呼んじゃったと。『インターステラー』みたいな話ですね。
- 山中「そう(笑)、怖い話やなって思うんですけど、どのメロディの世界線にも<Stay>が入ってきちゃうんですよ。じゃあ<Stay>という言葉を遣って俺が伝えたいことを導き出していくのがいいんやなと思って。サウンドに呼ばれた言葉が俺の想いを引き出してくれた。そういう感覚に近かったです。で、<Stay>という言葉から『ありのまま』というテーマが導き出されていった経路で言うと………この曲の平メロで歌っているのは、『本来の俺ってこういう人やんな』っていうことなんですよ」
- <不安の数/ハイになって/腐ったピースライト/哀れな背徳感に/奪われた⼈体>、<何も⾒たくないな/無様にまだ漂ってるんだ>、<蟻地獄に落ちていった/⾏き場ない未来/さよならを告げて/嘘で固めた>という箇所?
- 山中「そう。オーラルをやっている山中拓也は、何かを背負うことで頑張れている人間なんです。バンド、チーム、シーン、仲間の存在があるから俺はいろんなことを一生懸命やれている。でも仮にそういう存在を背負うことがなかったら、おそらく俺は<何も見たくないな>っていう人間として生きていたと思うんです。なんなら今、そういう本来の自分を求めているのかもしれないなっていう気がするんですけど」
- 本来の自分に戻れる瞬間も欲しいっていうこと?
- 山中「いい子ちゃんになっていくこと、周りの環境によって形成されていく自分の姿には一切の否定も後悔もないんです。でもその一方で『今の俺は、環境という枷によって形成されたものでしかないよな』って思うこともあって。だって本来、物事が10年以上も続くような人間じゃないですからね。」だらけてたいし、サボりたいし、何もしたくない人間なんですよ。元々は、脳内の回路がニートなんです(笑)。楽して生きていきたいなんて、みんな考えていることかもしれないんですけどね。でも、それこそ<Stay>という言葉から導かれたものやと思うんですけど、本来の俺は何も頑張りたくないんやけどなあっていうダメな人間の部分が見えてきたんです。だらける自分に対して『そのままでいいよ』なんて甘えたことは言えないんですけど、でも根本にある人間性を忘れることもできないなと思って。逆に言うと、仲間やファンからの期待や責任感があることによって頑張れている自分を正当化するためにも、俺の根本にある人間性をちゃんと映し出しておくことが大事だったんです。もっと言えば、『すべての肩の荷が下りた時に、また俺はダメ人間に戻るんやで』という楔をあらかじめ打っておくことで、ダメ人間に戻った時の自分に絶望しないようにしたというか。……まあ、いざ肩の荷が下りたとしても元々の自分には戻れないと思うんですけどね。バンドとしての責任感を下ろしたとしても、それ以外にも俺のことを想ってくれる人がたくさんできたから。そういう大切なものを作り上げてこられた自分の人生を捨てることなんてできないんですよね」
- そしてこの歌は、<何も⾒たくないな/無様にまだ漂ってるんだ>というところから<OK!!/Alright!!/歓声を抱いて>という歌に駆け上がっていくじゃないですか。<歓声>、つまりライヴでありファンの存在が大きな指針になるんだという歌だと受け取ったんですが、野暮な質問であることは承知の上で、ここに込めたものを教えてもらってもいいですか。
- 山中「“VOICE”と同じ時期に作った曲ということもあり、そこは歌の内容を物語として繋げたかったんですよね。“LIMIT”、“VOICE”、そして“Stay the way you are”を3ヵ月連続でリリースしようということは俺が提案したんですけど、自分が悩んでいた時期に作った曲であることも含め、歌の中に繋がりやストーリーが見えることによって、リスナーにとっても、人生のどの場面で触れた音楽なのかが深く刻まれる気がして。たとえばThe 1975はそういうストーリーテリングがめちゃくちゃ上手いバンドやったと思うんですけど、実際、曲を聴いて『あの時のマシューはこういう状態やったな』『俺はこういう気持ちで聴いてたな』っていうことを思い返すことが多いんですよ。つまり音楽と人生が紐づくということやし、人生に寄り添う歌であって欲しいと思うからこそ、そういうストーリー性が大事やと思うんですよね。それに歌の中で駆け上がっていく感じ、一気に視界が開ける部分を求めるというのも、ずっとやってきたことだと思うんですよ。自分自身に『ちゃんとせえよ』って言うために曲を書いているし、自分を鼓舞するために歌っているところもある。たくさんの人に聴いてもらってはいるけれど、あくまで日記みたいなものではありますよね」

- ダメな自分がいるから、それを何とか突破したい気持ちが歌になる。
- 山中「はい。そういう意味では、『The BKW Show!!』の頃に掲げていた『二面性』みたいなものがいまだに歌に出てきているんでしょうね。前を向きたい自分と、根っこにあるものを指している自分。だってね、自分で歌詞を読んでいても時々、『どういう意味や?』って思うことがあるんですよ。ひとつの歌の中に違う人格が出てきて、これは誰が言ってるんや?って思っちゃうところがあるんですよね。どこまでいっても俺の中には『前を向いて生きていきたい自分』と『本来の自分』のふたりが共存していて、どちらが何を言っているのかが時系列によってごちゃ混ぜやから、この歌は何を言ってるんや?っていうところが出てきてしまうんです。で、そのふたつが分かれていることを変えたいわけじゃなくて、俺の中にいるふたりの状態をフラットに書いているだけなんやと思います」
- デビューから『FIXION』の辺りまでは、歌詞の抽象度が非常に高かったと思うんですね。何かを説明するよりも、ゲロッと衝動的に出てきたものを置いていく向きが強かった。それがグラデーションで変化していき、何を歌って何を伝えたいのかがクリアになってきたと思うんですが、それでも、ご自身の中には乖離した人格がふたつ存在している感覚は変わらなかったんですか。
- 山中「ずっと変わらないですね。で、ふたつの人格が存在していることは変わらないまま、それぞれが更新されていってるのが面白いところなんです。目指すべき場所に向かって突き進んでいく自分がクリアになればなるほど、それに対して素の自分もまた際立ってくるっていう。今話していてハッとしたんですけど、俺がエミネムに惹かれたのもそういう部分やったんちゃうかなと思って。あの人って、自分の名前がたくさんあるじゃないですか。たとえばスリム・シェイディというのは彼の中の過激で攻撃的な部分を表すペルソナですけど、実際、リリックを読んでいても『これは誰のどんな言葉なんやろう』っていうのがたくさん入ってるんですよ。そういう一種の乖離が起こっている部分に親近感を覚えたというか、似た感覚が俺の中にもあったんでしょうね。自分の中にいるたくさんの人格と格闘して、葛藤している。そういう音楽の在り方に共鳴していた気がしますね。で、実際に俺がステージに立つ人間になって、周りの環境が変わって、それが俺の本体に影響を及ぼして、状況がどんどん進んでいくわけですよ。そうなった時に、周りの環境と自分を何とか繋ぐためにちゃんとしようとする自分もいるし、そうやって頑張っている自分を『何似合わないことをしてんねん』って馬鹿にする俺もいて。歌を書いている時点では辻褄の合ったものを綴っているつもりなんですけど、それを何年後かに見返した時に『これ誰や?』って思うのはそういうことなのかもしれない。ずっと自分の中にはふたつのペルソナがあって、それぞれが時代によって変化しているから、当の本人でも倒錯している歌だと感じてしまう。でも、そうやって自分の内側にあるものを書かないと、俺は歌を書けないんですよ。ひとりの人格だけで書き切れたのは“ONE’S AGAIN”くらいじゃないですかね」
- “ONE’S AGAIN”はたったひとりのあなたに向けた歌だったから、たったひとりの自分で書き切れたところもあるんでしょうね。
- 山中「ああ、そうやと思います」
- だけど、ふたつの人格の間でコミュニケーションが生まれて、その摩擦が曲になっていく回路は根本的に変わらないということですよね。
- 山中「ライヴの時はまったく取り繕ってなくて、自分がどんなヤツかも関係ないくらいのところに行けてる気がするんですけど。あと友達と一緒にいる時もピュアでいられている気がする。ただ、何となく、実際に進んでいる自分のほうが、本来の自分から距離をとりたがってる気がするんですよ。一方で、オーラルがよく言われる『人間が目を背けたくなる部分を歌にする』みたいなことは本来の何もしたくない自分が司っていて。人間のダメさを司っている自分から距離をとりたいとは言いつつ、どちらにせよその存在を認定している事実があるのは間違いないことですし、周囲の期待を背負いながら進んで行けば、本来の自分をよくしてあげられるんじゃないかな?っていう期待がどこかにある気がするんですよ。でも……こう話していて、今の自分がめっちゃ嘘っぽい人間のように感じ始めました(笑)」
- ええ⁉︎(笑)。ふたつが合致することはないかもしれないけど、摩擦を起こすだけじゃなくて素敵な相互作用が生まれていくはずだっていう話じゃないんですか。
- 山中「いや、本来的に存在しているダメな自分に染まり切りたくない、バンドの責任感を下ろした時にダメな自分に戻りたくないから、予防線を張るように服やアートの知識をつけているんじゃないかなって気がしちゃって。全然“Stay the way you are”じゃないやん!(笑)」

- いやいや、こういうことを素直に話せて、本来の自分も表せたこと自体が“Stay the way you are”なんだと思いますよ。こうしてハッとした感覚を話せているのは、どんな自分も受け入れているということだと思うから。だから<Every time we love>という結論になっていくんでしょうし。
- 山中「そうですねえ……きっと、本来のダメな自分に戻る術はないんですよ。そんな自分から距離を置こうとは言いつつ、実際は戻れないだけ。まあ、すごく単純に言うと本来の人間性が俺にとってのコンプレックスになっているという話なのかもしれないですよね。小さい時に泣き虫で『人間怖い』って思っていた自分とか、いじめられっ子やった自分とか、そういう俺から離れるために今の自分を形成していったところが間違いなくあるので。弱かった頃の自分から離れたいっていう気持ちが原動力になっているのは今もずっと変わらないんでしょうね。で、どれだけ離れたとて、元々の自分が消えるわけではない。ほんまに自分自身って何なんやろ?っていう話になってくるんですけど、単純にそのままでいることやと思うんですよね。頑張りたくない時は頑張らなくていいし、今やらなあかんと思ったら頑張るべきなんやろうし」
- 側から見た勝手な言い方で申し訳ないですが、コンプレックスに対する反動から生まれた自分でも、期待を背負うからこそ頑張れる自分でも、外的な要因で形成された自分でも、あるいは自分がダメだと感じてしまう自分でも、たくさんの自分が存在するのはいいことのような気がするんですよ。「本来の自分とは何なのかがわからなくなる」というのは、自分が散らかるくらいたくさんのものと出会ってきて、意志を持って生きてきたことの証だと思うから。で、それを丸ごと歌えているからこそ“Stay the way you are”というタイトルを掲げられたんじゃないかなと思うんですよね。
- 山中「……これは勝手な言葉上のイメージですけど、超がつくロックスターって『やりたいことやればいいじゃん』とか言ってそうじゃないですか(笑)。でも俺の言う『自分らしくあること』は、それとは違う意味合いやと思っていて。ただ好きなことを身勝手にやるのは、『自分らしくあること』ではない。周囲にいる人を想う気持ちが『自分』になって、それに対する行動ができることを『自分らしさ』と呼ぶんじゃないかなと思うんです。だから『好きにやれ』と謳って好き放題に生きている人には、俺の歌は響かないかもしれないですね。いろんな人と出会って、人への優しさとは何なんやろうと悩んで、本来の自分の人間性との間で葛藤してーーそういう人にこそ響いてくれたらいいし、俺らのライヴに集ってくれる人達がそれぞれの気持ちを思い切り投げかけてくれるのも、今日話したような気持ちが届いているからやと思うんですよね。今日話していて、そういう気づきが生まれました」
- 何より“Stay the way you are”の突破力は最高ですし、この3ヵ月話してきて、もっと潜れる山中拓也がいるということも、潜った結果としてさらなる爆発力が生まれるということもよくわかりました。
- 山中「今回のホールツアーはいい感覚でやれたし、“LIMIT”も“VOICE”も濃く伝わっていると実感できました。ただ、ホールツアーじゃなくてライヴハウスで観たいと思ってくれている人がいるのもわかっているし、オーラルがフェスに出ないことを寂しがっている人のことも知っている。なので、ホールツアーが終わった後にまた違う形で会いに行けるように、こういう爆発力のある曲を書いたところもあるんですよね。ただデカいところを目指しているわけじゃない、いろんなところに還るつもりだぜっていう気持ちでいます」
- その言葉をまさに表すように、ぴあアリーナでのファンクラブ限定ライブ「BKW!! Premium Party 〜THINK OUT LOUD〜」が開催され、さらに来年2月からはALL-STANDING TOUR 2027「DOPE PURPLE HOLE」が開催されます。これはおそらく『AlterGeist0000』のツアーファイナルで拓也くんが言っていた「アリーナでもスタンディングライヴをやりたい」という言葉を実現する公演であり、ライヴハウス、ホール、アリーナを問わない自由度を獲得してきたことの証明でもあると思うんですが、今後のライヴに対する展望を最後に語ってもらってもいいですか。
- 山中「申し訳ないですけど、『BKW!! Premium Party 〜THINK OUT LOUD〜』に関してはオーラルの展望が一切ないです(笑)」
- はい(笑)。
- 山中「『BKW!! Premium Party 〜THINK OUT LOUD〜』は超シンプルにファン感謝祭としてやるライヴなので。ファンクラブに入ってまでオーラルを追いかけてくれているコアな人に、追いかけてくれているからこその優越感を感じて帰って欲しいです。そう考えると、アリーナツアーを改めてやろうと思ったのも、ファンへの気持ちが大きな背景になっているところがありますね。『AlterGeist0000』ツアーの横浜アリーナで『椅子があるだけのアリーナじゃなくて、スタンディングも椅子もある状態でアリーナをやりたい』と話しましたけど、俺らがそういう夢を実現していけるのは、日頃からオーラルを追いかけてくれている人のおかげじゃないですか。その感謝を込めて、スタンディングありのアリーナをやりたいなと思ったんですよね。もちろんスタッフチームのおかげで夢を叶えていけている事実もあるけど、それ以上に、絶対的にファンのおかげで俺らは歩んでいけているわけですから。その感謝を全面的に表しつつ、俺らの次なる夢も叶えていくツアーにしたいと思っています」
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Photo: Ryotaro Kawashima
Interview: Daichi Yajima
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